「総合・推薦選抜進学者は内定が取れない」というデマ④

 お読みくださり、ありがとうございます。成熟時代をたくましく生き抜くキャリア戦略をお伝えするヘルメスゼミ®の国家資格キャリアコンサルタント、ULTRA® Master Trainer、クロイワ正一です。

 

 10年以上前(2013年4月)に教育系メディア「リセマム(ReseMom)」さんに提供した記事が2021年以降の「大学入試改革」をそのまま予言していると好評でしたので、ここに再編集し掲載させていただきます。

 

 「総合型選抜・学校推薦型選抜を経由して進学した学生は就職活動で不利」という大学受験界を巡る噂の危険性については、過去の記事()でもコメントさせていただきました。

 

「総合・推薦選抜進学者は内定が取れない」というデマ①

「総合・推薦選抜進学者は内定が取れない」というデマ②

「総合・推薦選抜進学者は内定が取れない」というデマ③

 

 私自身が30年間にわたり、企業の人材採用・育成の支援に携わってきた立場からも、そうした噂に妥当な根拠がないことを、多角的に考察、実証してきました。

 

 今回は、なぜそのような妄言が大学受験界に流れるのか、その原因を探るとともに、情報収集における注意点について言及させていただきます。

 

 高校や大学合同説明会で「総合型選抜や学校推薦型選抜で入学すると就職に不利だというのは本当ですか」という質問を受けることが多くなってから、私なりに「なぜそのようなデマが飛び交うのか」を調べてみました。

 機会を見て、どこからそのような情報を入手したのかを探索してみたのです。

 

 すると、一番多かった回答は「進路講演会で招いた予備校の教務や模試業者などの関係者から聞いた」というものでした。こうした情報を基に、付き合いの長い教育業界の知人に尋ねてみると、やはりそうした業界の広報・広告戦略であると合点しました。

 

 市場を広げる努力、つまりマーケティングは、資本主義社会ではどこでも行われていることです。否、社会主義国家でも、党員の増加と定着を画策する努力は、もっと組織的に行われています。

 

 デマが出回った一つの要因は、総合型選抜・学校推薦型選抜の拡大を阻止するための戦略の延長線上の情報操作だったのです。

(しかし、その後、総合型選抜・学校推薦型選抜などの特別選抜を経由した大学進学者は増え続けています。文部科学省の「学校基本調査」によれば、2024年4月に大学に入学した学生のうち特別選抜を経由した比率は、国立大学18.5%、公立大学30.5%、私立大学59.2%です。私大入学者の6割は、特別選抜経由なのです。特別選抜拡大阻止の目論見は、大きく外れました。)

 

 情報操作というと人聞きが悪いですが、大げさに言うと、人間誰しも情報操作を行いながら個体を維持し、遺伝子を残す活動に勤しんでいます。

 

 好みの異性が現れたら「料理が得意です」などと自分の長所を伝える努力はしますが、「耳垢が気になって小指でよく耳をほじる癖があります」など、短所はできるだけ隠すでしょう。

 

 企業活動も同じです。自社の営業活動が有利に働く情報は積極的に流しますが、

不利になる情報は封印します。

 

 総合型選抜・学校推薦型選抜に関する噂について調査しているとき、知り合いの教育産業幹部からこんな情報を得ました。

 

 「クロイワさん。それは、早めに合格が決まってしまう総合型選抜・学校推薦型選抜を目指す生徒が増えたら困るよ。だって、こっちは冬期講習や直前講習まで準備しているのに、総合型選抜・学校推薦型選抜の受験者は11月から12月にはさっさと合格を決めて退会してしまうからだよ。それでも昔なら、9月に申し込んだ冬期講習代を返さなくて済んだけれど、今は消費者契約法とか、何かと法の縛りが厳しくなって、こちらは商売あがったりだ。だから、高校で進路ガイダンスや保護者会の講演を頼まれたら、できるだけ一般選抜での受験を勧めているんだ。高校の先生だって、そっちの話を喜ぶし……」と。

 

 そして、高校の先生からも、こんな本音を聞く機会が増えました。「総合型選抜・学校推薦型選抜で早めに大学進学が決まってしまうと、その生徒たちが浮き足立ってしまって、一般選抜で大学を目指す生徒たちに悪影響が出るんですよ」と。

 

 私も教育業界に身を置く者として、このような意見は否定できません。予備校で小論文講座を担当していたとき、「冬期講習の小論文講座は、総合・推薦で合格した生徒が多く、受講者が減ったために、もともと3クラス開講予定でしたが1クラスにまとめました」などと報告されたときには「冬期講習の報酬が減ってしまうじゃないか」と冷や汗をかきましたから……。

 

 読者の皆さんに訴えたいことは、大学受験に関しても、さまざまな情報に対して

批判的(クリティカル)に考えることが重要だということです。

 

 高校の保護者会などで教育産業の関係者から「総合型選抜・学校推薦型選抜で大学に入った学生は就職活動で苦労する」といった情報を得たとしても、「本当にそうなのか」と疑ってみる必要があるということです。

 

 週刊誌などの連続性のない情報に対しても同様の姿勢が必要です。私の意見についてもそうです。私は、総合型選抜・学校推薦型選抜の推進派ですから、総合型や学校推薦型で大学に進んだ学生のサクセスストーリーが印象深く心に残っていて、

そのような事例を多々ストックしています。

 

 しかし、総合型選抜・学校推薦型選抜反対派の方々の頭には「高校時代にはあまり勉強もせずに、総合や推薦で大学に入学し、そのまま不勉強で学生生活を過ごし、就職活動にも失敗している」学生さんの記憶が深く残っているのでしょう。

 

 そして、そうした記憶を根拠として、冒頭で示したような噂を吹聴するのです。

 

 このように、大学受験の領域に限りませんが、さまざまな偏った情報が交錯するのが、マスメディアやWEB時代の特徴です。

 

 何回も述べさせていただきますが、こうした時代だからこそ、情報を受ける側が、メディアから受け取る情報を批判的に考え、自分からも情報発信する能力、すなわちメディアリテラシーが必要になるのです。

 

以上

 

ヘルメスゼミ®には総合型・学校推薦型選抜の対策講座があります。

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(ソウゴウスイセン・ドットコム)

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