2025年
5月
09日
金
お読みくださり、ありがとうございます。成熟時代をたくましく生き抜くキャリア戦略をお伝えするヘルメスゼミ®の国家資格キャリアコンサルタント、ULTRA® Master Trainer、クロイワ正一です。
10年以上前(2013年4月)に教育系メディア「リセマム(ReseMom)」さんに提供した記事が2021年以降の「大学入試改革」をそのまま予言していると好評でしたので、ここに再編集し掲載させていただきます。
「総合型選抜・学校推薦型選抜を経由して進学した学生は就職活動で不利」という大学受験界を巡る噂の危険性については、過去の記事(①、②、③)でもコメントさせていただきました。
私自身が30年間にわたり、企業の人材採用・育成の支援に携わってきた立場からも、そうした噂に妥当な根拠がないことを、多角的に考察、実証してきました。
今回は、なぜそのような妄言が大学受験界に流れるのか、その原因を探るとともに、情報収集における注意点について言及させていただきます。
高校や大学合同説明会で「総合型選抜や学校推薦型選抜で入学すると就職に不利だというのは本当ですか」という質問を受けることが多くなってから、私なりに「なぜそのようなデマが飛び交うのか」を調べてみました。
機会を見て、どこからそのような情報を入手したのかを探索してみたのです。
すると、一番多かった回答は「進路講演会で招いた予備校の教務や模試業者などの関係者から聞いた」というものでした。こうした情報を基に、付き合いの長い教育業界の知人に尋ねてみると、やはりそうした業界の広報・広告戦略であると合点しました。
市場を広げる努力、つまりマーケティングは、資本主義社会ではどこでも行われていることです。否、社会主義国家でも、党員の増加と定着を画策する努力は、もっと組織的に行われています。
デマが出回った一つの要因は、総合型選抜・学校推薦型選抜の拡大を阻止するための戦略の延長線上の情報操作だったのです。
(しかし、その後、総合型選抜・学校推薦型選抜などの特別選抜を経由した大学進学者は増え続けています。文部科学省の「学校基本調査」によれば、2024年4月に大学に入学した学生のうち特別選抜を経由した比率は、国立大学18.5%、公立大学30.5%、私立大学59.2%です。私大入学者の6割は、特別選抜経由なのです。特別選抜拡大阻止の目論見は、大きく外れました。)
情報操作というと人聞きが悪いですが、大げさに言うと、人間誰しも情報操作を行いながら個体を維持し、遺伝子を残す活動に勤しんでいます。
好みの異性が現れたら「料理が得意です」などと自分の長所を伝える努力はしますが、「耳垢が気になって小指でよく耳をほじる癖があります」など、短所はできるだけ隠すでしょう。
企業活動も同じです。自社の営業活動が有利に働く情報は積極的に流しますが、
不利になる情報は封印します。
総合型選抜・学校推薦型選抜に関する噂について調査しているとき、知り合いの教育産業幹部からこんな情報を得ました。
「クロイワさん。それは、早めに合格が決まってしまう総合型選抜・学校推薦型選抜を目指す生徒が増えたら困るよ。だって、こっちは冬期講習や直前講習まで準備しているのに、総合型選抜・学校推薦型選抜の受験者は11月から12月にはさっさと合格を決めて退会してしまうからだよ。それでも昔なら、9月に申し込んだ冬期講習代を返さなくて済んだけれど、今は消費者契約法とか、何かと法の縛りが厳しくなって、こちらは商売あがったりだ。だから、高校で進路ガイダンスや保護者会の講演を頼まれたら、できるだけ一般選抜での受験を勧めているんだ。高校の先生だって、そっちの話を喜ぶし……」と。
そして、高校の先生からも、こんな本音を聞く機会が増えました。「総合型選抜・学校推薦型選抜で早めに大学進学が決まってしまうと、その生徒たちが浮き足立ってしまって、一般選抜で大学を目指す生徒たちに悪影響が出るんですよ」と。
私も教育業界に身を置く者として、このような意見は否定できません。予備校で小論文講座を担当していたとき、「冬期講習の小論文講座は、総合・推薦で合格した生徒が多く、受講者が減ったために、もともと3クラス開講予定でしたが1クラスにまとめました」などと報告されたときには「冬期講習の報酬が減ってしまうじゃないか」と冷や汗をかきましたから……。
読者の皆さんに訴えたいことは、大学受験に関しても、さまざまな情報に対して
批判的(クリティカル)に考えることが重要だということです。
高校の保護者会などで教育産業の関係者から「総合型選抜・学校推薦型選抜で大学に入った学生は就職活動で苦労する」といった情報を得たとしても、「本当にそうなのか」と疑ってみる必要があるということです。
週刊誌などの連続性のない情報に対しても同様の姿勢が必要です。私の意見についてもそうです。私は、総合型選抜・学校推薦型選抜の推進派ですから、総合型や学校推薦型で大学に進んだ学生のサクセスストーリーが印象深く心に残っていて、
そのような事例を多々ストックしています。
しかし、総合型選抜・学校推薦型選抜反対派の方々の頭には「高校時代にはあまり勉強もせずに、総合や推薦で大学に入学し、そのまま不勉強で学生生活を過ごし、就職活動にも失敗している」学生さんの記憶が深く残っているのでしょう。
そして、そうした記憶を根拠として、冒頭で示したような噂を吹聴するのです。
このように、大学受験の領域に限りませんが、さまざまな偏った情報が交錯するのが、マスメディアやWEB時代の特徴です。
何回も述べさせていただきますが、こうした時代だからこそ、情報を受ける側が、メディアから受け取る情報を批判的に考え、自分からも情報発信する能力、すなわちメディアリテラシーが必要になるのです。
以上
ヘルメスゼミ®には総合型・学校推薦型選抜の対策講座があります。
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(ソウゴウスイセン・ドットコム)
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お読みくださり、ありがとうございます。成熟時代をたくましく生き抜くキャリア戦略をお伝えするヘルメスゼミ®の国家資格キャリアコンサルタント、ULTRA® Master Trainer、クロイワ正一です。
10年以上前(2013年4月)にリセマムさんに提供した記事が、2021年の「大学入試改革」をそのまま予言していると好評でしたのでここに再編集し掲載させていただきます。
今回の記事では、大学受験における総合型選抜や学校推薦型選抜へのチャレンジが就職活動にもたらす効用についてお話します。
2013年3月15日に推薦入試(当時)の導入について記者会見を開いた東京大学は、その理由について、このように説明しました。
「従来のテストで把握できない資質や、優れた人材を発掘し、多様な人材を採りたい」(佐藤慎一・副学長、当時)。
総合型選抜・学校推薦型選抜などの特別選抜と一般選抜の相違点は、前者では「学究意欲や社会貢献意欲を述べる志望動機」の提出を求められますが、後者では一部の医療関係学部を除き、そうした書類の提出は求められないことです。
(しかし、2021年度以降、一般選抜でも「高校時代に発揮した《主体性・多様性・協働性》について500字以内にまとめて提出せよ」などという書類提出を課す大学が増えました。)
私が高校や塾・予備校などから依頼される指導内容も、一番多いのは、この「志望理由書対策」です。
多くの大学では、志望理由書に盛り込む内容として、以下の3点を求めてきます。
・大学で学びたいこと(近未来)
・大学で学んだことを活かして取り組みたい仕事(遠未来)
・未来展望を描いたきっかけ(現在・過去)
「遠未来、近未来、現在・過去」とは、『推薦・AO入試!超マニュアル』(KKロングセラーズ、1999年)や『志望理由書の模範的書き方』(ライオン社、2002)を執筆した際に、私が独自に創った表現です。
そして、現在では多くの指導書や指導現場でも使われており、この領域の指導では半ば固定化した表現になっています。
こうした書類を完成させるためには、必然的に「受験する学部ではどのようなことが学べるか」とか、「学部卒業後にはどのような仕事があるか」といったことを、学校案内や公式サイトで調べる必要性に迫られます。いわば、大学受験から数年後までの「人生の予習」をするようなものです。
国家資格キャリアコンサルタント(Career Development Adviser)でもある私が、総合型選抜・学校推薦型選抜を説明する際に「今までの自分の人生を振り返り、将来を設計する選抜方式です」という表現を用いるのは、こうした背景があるためです。
このようなキャリアデザインを早期から考えていれば、就職活動もスムーズに進みます。受けるべき講義も、就職からの「逆算」によって定まってきますし、ゼミや研究室で指導を受けるべき教官の目星も早々とつきます。
すると、就職活動でエントリーシートを書くときも、面接を受ける際にも、「私は自分が専攻した学問を活かすべく、貴社に入りたい。そのようなことを高校生のときから考えていた」といったことを堂々と表明できるのです。
坂上吾一・太一(ともに仮名)兄弟という、とても印象に残っている教え子がいます。二人とも、同じ早稲田大学の政治学部に総合型選抜で入学しました。
吾一くんの志望動機は、以下のような内容でした。
「幼少期から神社の祭りなどに参加し、地域コミュニティーの大切さを実感してきた。それゆえ、政治学科で地方自治を学び、将来は公務員になるか地方自治を支援する仕事に就きたい」。
一方、太一くんは、次のようにまとめました。
「小学生時代、ケーブルテレビの番組に子どもキャスターとして参加していたことがある。身近で起こっていることをお話しすることと、それに対して視聴者からコメントをもらうことがとても楽しかった。以後、中学・高校でも新聞部に属し、取材・記事執筆などを続けてきた。そこで、学部ではマスコミの役割について学び、将来はメディアで働きたい」と。
二人とも、高校の先生からは「一般選抜で早稲田大学政治経済学部に入るにはとてもハードルが高い」と言われていましたが、みごとに総合型選抜で合格し、念願の学びの機会を手に入れることができました。
そして、吾一くんは、大手シンクタンク(N社)に就職し、情報通信技術(ICT)で地方自治を支援しています。太一くんは、大手広告代理店と全国紙(Y新聞)の内定をダブルで獲得し、後者に入社しました。そして、数年前から教育の地域格差について独自の取材を続けています。
私は「総合型選抜・学校推薦型選抜で大学に入ると内定を獲得できない」といった類のデマを聞くたびに、この二人だけでなく、これらの選抜方式を経由して大学に入り、社会の第一線で活躍している幾多の教え子たちの顔を思い出し、失笑してしまいます。
同時に、そのような根も葉もない噂によって心を傷めている現役大学生がいるかもしれないことを想像すると、悲しみと憤りが込み上げてきます。
高度情報社会は、利便性を提供してくれる半面、私たちを不条理な脅威にも晒します。こと大学受験に関しても、メディアリテラシー、すなわち「批判精神を持ってメディアから流れてくる情報に接する姿勢」の必要性を痛感します。
以上
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お読みくださり、ありがとうございます。成熟時代をたくましく生き抜くキャリア戦略をお伝えするヘルメスゼミ®の国家資格キャリアコンサルタント、ULTRA® Master Trainer、クロイワ正一です。
10年以上前(2013年4月)にリセマムさんに提供した記事が2021年度の「大学入試改革」をそのまま予言していると好評でしたのでここに再編集して掲載させていただきます。
前回(①)は、大学受験界を巡る「総合型・学校推薦型選抜経由の学生が就職活動で不利」という噂が、いかに妄言・迷言であるかについて説明しました。
折りしも、記事発表当時の2013年3月15日、急速に進むグローバル化に対応すべく、前向きな大学改革に取り組んでいる東京大学が推薦入試(現・学校推薦型選抜)の正式導入を発表しました。
この事実こそが、まさに件の噂の危うさを象徴しています。
今回は、こうした議論の不毛さを実証的かつ論理的に示させていただきます。
第一に、この話は「総合型・学校推薦型選抜を経由した進学者の中には、高校時代にあまり勉強したことがない生徒もいる」という現実を、あたかもすべての進学者がそうであるかのように捻じ曲げています。学校推薦型選抜でも指定校制で進学する生徒は、高校の成績上位者ですから、むしろ逆です。
また、公募推薦、自己推薦または総合型選抜経由の進学者の中にも、成績優秀で学力の高い生徒はたくさんいます。「総合型・学校推薦型選抜で大学に入った。ゆえに、学力レベルが低い」という論理は、ここにおいて脆くも崩れます。
第二に、「高校レベルの勉強の習熟度が低い。それゆえ、企業は避ける」というロジックにも無理があります。日本経団連が提示する「新卒者に求める資質」を見ると、上位項目は「コミュニケーション能力、主体性、チャレンジ精神、協調性」
などとなっています。他の調査でも類似の結果が出ています。どこにも「高校時代の成績(勉強のでき具合)」といった項目はありません。さらに言えば「大学時代の成績」すら、さほど問われていないのです。
保護者の方々も、イメージしてください。「高校時代の成績は5段階評価でオール5。超難関大学に主席で入学して、大学での成績も優(またはA)ばかり」。先の噂なら、このような学生は、企業から求められるはずです。
しかし、保護者の皆さんが「自分の会社に入ってほしい人材」として想定する学生は、このような基準・尺度で評価される人物でしょうか。おそらく多くの方は、首を横に振るはずです。
むしろ「頭でっかちで融通が利かないかもしれない」といった連想から、「遠慮したい」というイメージを抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私が言いたいことは「成績優秀者がよくない」ということではありません。就職活動と大学入試の際の選抜方式は、別の次元の問題であるということです。
次回(③)は、総合型選抜や学校推薦型選抜の際に考えた志望動機が、そのまま就職活動で活用できたという事例を紹介します。そして、中長期的なキャリアデザインにおける総合型選抜・学校推薦推薦型選抜に挑戦する意義・効用についても、具体例を挙げながら説明いたします。
以上
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2013年3月15日、教育界を驚かすニュースが流れました。
「AO入試(現・総合型選抜)・推薦入試(現・学校推薦型選抜)を導入していない数少ない大学」の象徴的存在であった東京大学が、後期試験の後継として学校推薦型選抜入試の正式導入を発表したのです。
私が大学入試の多様化を察知し、『推薦・AO入試!超(ULTRA)マニュアル』(KKロングセラーズ、1999)という本を著したのは、2013年から遡ること14年前でした。
その後も総合型選抜(旧・AO入試)や学校推薦型選抜(旧・推薦入試)に関する多くの参考書、映像教材などの制作に携わってきたせいか、高校や予備校・塾、または大学合同説明会の主催者さまから、総合型選抜・学校推薦型選抜の生徒への対策講座やその指導法に関する教員研修の依頼を受けることが年100回ほどありました。
しかし、当時そうした機会で不可思議な質問を受けることも多くなりました。「私立大学では入学者の半分以上が総合型選抜、学校推薦型選抜など、特別選抜を経由した」といった報道が新聞紙面を飾り始めた2008年辺りからでしょうか、高校生、先生、保護者の方々から「総合型選抜や学校推薦型選抜で大学に入ると就職に不利なのですか」とか「総合型・学校推薦型で大学に入ると内定が取れないって本当ですか」などと問われる回数が増えてきたのです。
なぜそのような質問をするのか、理由を問うと、多くの方からこうした答えが返ってきます。「総合型選抜や学校推薦型選抜を経由した進学者は、一般選抜対策のような勉強をしていないから、学力レベルが低い。それゆえ、企業に倦厭される」と。
この、あまりにも乱暴かつ稚拙なロジックに対して、大学入試だけでなく大学生の就職活動支援や企業の採用面接官トレーニングにも携わってきた私は、当初は失笑しながら、こう対応していました。
「まともな企業の採用活動では、そのような履歴を問う余裕はありませんし、逆にそんな馬鹿馬鹿しい採用基準を持つ会社には入らない方がいいでしょう」と。
そう即答できた背景には、20数年間、さまざまな企業の人材採用・育成の支援に従事してきた経験から得たこうした知見がありました。
つまり、「企業が採用すべき学生を評価する基準は、そのようなモノサシではない。まして21世紀社会では、なおさらそうである」という確信があったのです。
次回(②)は、「総合型選抜・学校推薦型選抜経由の学生が就職活動で不利」という発言の危うさを、論理的かつ実証的に示します。ご期待ください。
以上
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